<花火職人>

人々が熱狂の渦を巻いていた1980年代、ひと際輝く男達がいた。

夜空を自分の庭のように支配し、培った経験を頼りに大輪の花を咲かせる彼等は、日本を、いや世界をかける芸術家といっても過言ではない。
しかし、この業界にも「近代化」という時代の大変動がおきた。
機械の力はそれまで幾人もの花火職人達が培ってきた経験を凌駕し、全てを一変させてしまったのだ。
多くの花火職人は戸惑い、時代の力に屈し、その技を発揮する舞台を、機械へと譲った。
この業界から去った者、自身の磨き上げた技を捨て、機械化の流れに身を任せるようになった者も少なくなかった。
しかし、こうした時代の変化の中でも、磨き上げた腕を信じ、己の信念を貫く意思を持ち続ける者もいた。

ゆっくりと、だが確実に。
かつての思いをと経験を胸に秘め、己の信じた道を突き進む彼等を人は「花火職人」と呼んだ。

<『菊』と『牡丹』>

日本の花火の代表格には『菊』と『牡丹』がある。
この二種は「割物」と呼ばれ、大きな音をたてて夜空に大きく花開く、丸い花火のことを指す。
破裂の勢いが強いため非常に大きく、また完全な球体に飛び散るため何処からでも丸く見える。
この菊と牡丹が基本になって、2重3重と重なったり、形の違う芯や模様が入ったりといった変化がつく。

『菊』は、菊の花びらの光が、すーっと残って尾を引くのが特徴。
『牡丹』は菊と似ているが、花びらの光は尾を引かず点のままである。

<スターマイン>

スターマインとは、特定の花火を指すものではない。
いくつもの花火を組み合わせて、数十発から数百発を連続的に打ち上げ、ひとつのテーマを描き出すものであり、「速射連発花火」とも呼ばれる。
使用する花火の種類によって無限の組み合わせがあり、短時間に大量の玉を打ち上げ景気良く華々しい見える演出は、そのスピード感も相まって花火大会を盛り上げる。

<町の花火製作会社>

この町には「なみはな工房」と「たしろ製作所」という2つの花火製作会社があり、ライバル関係にある。
互いが相手よりも、高く大きな花火を打ち上げようと凌ぎを削っている。
試し打ちができる河川敷が一つしかないので、花火の打ち上げ練習をするために、両社の血気盛んな職人たちは、日々河川敷の取り合いをしている。

<1976年>

1976年、老若男女がモントリオール五輪で湧き上がる。
日清焼きそば「UFO」が大ヒット。
アメリカの航空機製造大手のロッキード社による主に同社の旅客機の受注をめぐって、この年に明るみに出た世界的な大規模汚職事件、ロッキード事件。
他には日本のプロレスラーであるアントニオ猪木と、ボクシング世界ヘビー級チャンピオンのモハメド・アリによる「世紀の一戦」。

およげ!たいやきくんが453万枚の大ヒット。
大和運輸が「クロネコヤマトの宅急便」を開始。
そして「こちら葛飾区亀有公園前派出所」が連載を開始した年でもある。

<1980年>

もちろんこの年にも4年に1度のオリンピックは開催される。
オリンピック開催地モスクワの冷戦下において、東側諸国の盟主的存在であるソ連で行われた今大会は、 前年1979年12月に起きたソ連のアフガニスタン侵攻の影響を強く受け、日本を含む67ヶ国が集団ボイコットを行う事態に至った。

男の子のお返しの日、ホワイトデーが始まったのはこの年。
他にも任天堂が初の携帯型ゲーム機「ゲーム&ウオッチ」を発売。
黒澤明監督の「影武者」がカンヌ映画祭グランプリを受賞。
ジョン・レノン銃殺事件が起きたのもこの年である。

<1986年>

NTTの株が当初の公募119万7千円からその日の終値が160万円に。そこから2ヶ月後には約3倍の318万円まで株価が高騰した。
NTT株フィーバーなどマネーブーム高まる。
この年からバブル景気が始まる。

「おニャン子クラブ」「キャッツ」「子猫物語」「マイケル」などネコブーム。
女性は、ファッションが派手になり、金のアクセサリーを付け、ボディコンが登場、ミニスカートが流行る。
ドラゴンボール、聖闘士星矢のアニメが始まる。
他にも
レンズ付きフィルム 写ルンです
サントリービール モルツ
ファミコンソフト ドラゴンクエスト
などが発売された。